こんにちは、よっちです。

住宅メーカーから出される見積もり額って膨大な金額で、同じ条件で他と比較できないから高いのか安いのかわからないですよね。よっちは一条工務店に決める前、まだいくつかのメーカーを選択肢に入れていた頃で、他社で最初の見積もりとほぼ同時にいきなり値引きの話が出てびっくりしたことがあります。初回見積もりのその日いきなり値引きが200万円でいかがですか?って(゚∇゚ ;)エッ!?

最初の価格の根拠ってなんだったの?って思うわけですよ。住宅の価格の付け方はよく分かりませんが、違う業界での価格設定についてはよっちはそれなりの経験値を持っていると思います。今回は価格の設定について考えていきたいと思います。


ミシン

モノの価格はどうやって決まるのか。

①原価積み上げ方式で決まる
②その商品の価値で決まる
③先に売価ありきで決まる
④流通の都合で決まる


他にもあるでしょうが、ぱっと思いつくのはこんな感じでしょうか。ひとつずつ見ていきたいと思います。



①の原価積み上げ方式といのは、その製品に対し、「工賃や部材のそれぞれの価格を積み上げて、コストがこれだけかかったし、利益をこんだけ乗っけて、結果として売りたい価格はこれだ」というものです。この原価積上げ方式が最もポピュラーな価格設定でしょうし、一番複雑な要因がからんでくるものです。よっちが一番詳しく話したいのもこの①ですが、ボリュームが多いので後日に回し、今回は②~④についてお話します。




②その商品の価値で決まる

ちなみによっちが繊維業界の営業だった頃、当時の部長からはよくこう言われていました。

「商品の価格は原価で決めるな。価値で決めろ!」

部長が言うのは②のパターンです。
どういうことかというと、繊維業界です。ひらたくいうと着る物の業界です。流行り廃りがあります。「流行っているものを素早く取り入れ、センスがいい商品なら高く売れる。原価なんか関係ない。売れる価格で高値売りしろ。儲けよ。」とう意味です。

分かりやすいですよね。要は儲けよということです。

これは製造メーカーでも、小売りでも思いは一緒です。儲けたいんです。利益率が落ちると上から怒られます。会社として落ちすぎると経費を吸収しきれなくなり存続すら危うくなってしまうのですから。


具体例でいきます。例えばレースがたくさんついたヒラヒラのブラウスがお店でよく売れているという情報をキャッチしたとします。可能であれば現物をサンプルとして買ってきて、すぐに同じような雰囲気の商品を作るのです。仮に、「意外と原価が安く済んだな」と思う商品でいつもならもうもっと下の上代(価格)設定になる原価であっても、販売先にはワンランク上の価格帯の商品として「上代〇〇円で売れる商品です!」と紹介でき、その上代に合わせた価格で高く卸せるのです。上代というのは〝小売店頭での販売価格" という業界用語です。小売り側もワンランク上の売価で売れれば、1枚当たりの売上も上がるし、利益額も増えるし、そもそも売れる商品なので両得なわけです。



スーパーの棚


③先に売価ありきで決まる

②の「価値で決まる」にも似た理由です。この価格帯の商品を揃えたいからという理由でいわば戦略的に設定する価格です。ブランド品、高級品や貴金属に見られがちです。商品のコストから考えたらもっと低価格で提供できるはずなのに、そのブランドが育てたイメージが下支えし、高い価格帯でも売れるのです。人は支払った対価の額に対し満足感が左右する部分があります。高いものを所有するだけで優越感を持てたりします。逆に、本当はものすごい価値のある物なのに、小銭で手に入れてしまったら大事にされないでしょう。満足感は価格に大きく左右される人間の心理をついた設定といえるかもしれません。よっちは高級品を否定するわけではありません。高級品を買える人たちをう羨ましくは思いますが(*゚∀゚)っ

さて、身近なところでも価格ありきの作戦がよく使われています。例えば売り場で同じメーカーの掃除機が3種類おいてあったとします。新発売のシリーズです。

A:なかなかの安さ
B:まんなか
C:そこそこ高い

この3つが並んでいたら多くの人がBを買います。ところがAとBだけの陳列だったらBをとる人が減りAを取る人が増えるのです。3つ並んでいた場合、一番安いものを買うのは、品質大丈夫かなあと不安になってしまいますが、価格が2段階しかなかたら、「安いほうでいいや」になってしまうのです。あえて一段高い商品を見せるだけで結果としてB価格の商品の販売が伸びるのです。

この場合のCが、価格ありきで用意された商品です。作る側にしたら、あまり売れなくてもいいや、製品のシリーズに幅を持たせるためハイエンドマシーンも1つ用意しておこう、ってことです。



④流通の都合で変わる

流通に起因する売価の設定の一つは流通ルートに起因するものがあります。

20数年前、中飛ばしという言葉がはやりました。流通における中間段階に介在していた会社を飛ばして、生産から小売りまでできるだけ直結させ、モノを低価格で提供できるようにしようという流れです。製造メーカーから小売販売までの間に、流通の中間業者が多く介在すればするほど、それぞれのマージンが発生しますし、物の移動が伴えば物流経費も重ねてかかります。ですから中間段階は少ない方が商品を安く提供できます。

流通経路があらかじめ決まっている商品であれば、その筋道で適切な利益がとれ、なおかつ店頭で競争力のある商品になるように計算して小売り希望価格(定価)が設定されます。先ほどの表現でいえば上代のようなものです。小売り希望価格が設定されている商品はパッケージに印字されています。

ルートが決まっている自動車業界などの一部業界を除き、一般的にスーパーや百貨店にならぶ工業製品の多くはかつて次のような流通をしていました。


トラック夜間

メーカー→一次問屋→二次問屋→小売り販売店

メーカーは製品を製造します。企画生産に特化していていますので配送業務は苦手です。一括で大口取引してもらえる一次問屋に商品を買ってもらいます。二次問屋は一次問屋から、もうすこし細かく仕入れられます。メーカーが出庫する大口取引数量をさばけるのであればメーカーから直接買いたいところですが、それだけの量をさばけないので二次から仕入れることになります。次は小売りです。小売りもより流通の上の段階から直接仕入れれば安く入ります。しかしメーカーは小売チェーン店の1店舗ずつに配送なんかしてくれません。その役目を負っているのが二次問屋なのです。デリバリー機能がその重要な役目です。

ここで価格的なことを考えると、メーカーが500円で作った商品を700円で売る。700円で仕入れた一次問屋は15%の利益を乗っけて823円で売る。823円で仕入れた二次問屋は20%乗っけて1028円で売る。1028円で仕入れた小売店が25%くらい乗っけて売ると1370円。おそらく価格をきりのよい1380円で売るでしょう。細かく分けて出荷しない川上の会社ほど物流経費は少なくて済みます。扱う量に対してかける人件費も少ないでしょう。つまり経費率が低いので低いマージンで出せるのです。ちなみにここに挙げたマージンの率はおおよそです。必ずしもこうとは限りません。

定価を設定するメーカーであれば、この商品の定価を1500円くらいに設定するのではないでしょうか。定価1500円を1380円で売っているなら恰好が付きます。それぞれの段階で適切な利益を得られるように定価が設定されているのです。

ここで大きな小売店チェーンが自社で大規模な倉庫兼配送センターを作ったとしましょう。そうするとそのチェーン店はメーカーから直接商品を仕入れられるかもしれません。メーカーからが無理としても一次問屋から買えるかもしれません。つまり二次問屋で発生した20%の仕入れ値上昇を省いて入れられるのです。チェーン店は自社の配送センターの経費が発生しますが二次を通すより安く入れられる分、店舗での売価設定も安くできるわけです。いわゆる価格破壊です。そうなると定価が1500円の商品を1180円くらいで販売しても30%近くの利益率で販売できるのです。

一方で定価設定のない商品も少なくありません。この場合は目安となる価格がないわけです。あくまで参考上代という形で、目安しかありません。そうなるとルートによって、介在した会社の数によって小売り店頭の価格が大きく変わってしまう場合があります。同じ商品でもある店では1980円なのに、不幸にも他のある店では2980円になってしまう場合もあるのです。

このように、如何に川上の企業から商品を入れられるかによって店頭での設定売価が変わってきます。
実はメーカーをも飛び越えて、メーカーが商品を実際に作らせている工場から直接仕入れることでもっともっと安く仕入れることもでます。以前の会社でのよっちの仕事はまさに、このメーカーと工場の間に入るような仕事でした。この話はあらためて別の機会にしたいと思います。



荷物

流通にはもう一つ在庫が理由で価格が変わる場合があります。

作ってしまったものは売るしかありません。買ってしまったものは、なんとかして売りさばかねばなりません。
お金をかけて商品を準備したのですから、その代金を回収しなくてはなりません。

普通お店から物を買うときは、いつも現金決済です。レジにお金を払って商品を持ち帰ります。ところが流通段階では違います。その場で現金決済していません。1ヵ月分の仕入れを、例えば月末締めで翌月末にまとめて支払ったり、問屋間であれば手形決済で120日後にやっと現金を手に入れられるなんていう支払い方法もあります。期日の長い手形を発行する方が、買う側は金銭的に楽です。仕入れた物を売って現金化する時間があるので、買ったのはずっと前なのに、売って得た現金を支払いに回せるという現象が発生するのです。

とかく、仕入れと支払いは常に発生するのが商売ですから、ギリギリでやっている企業は特に商品を急いで現金化しなくてはと気を揉むのです。

そんな中で、足の遅い商品、売れない商品の在庫を抱えてしまったら、仕入れ値を割ってでも安く販売するしかありません。在庫のまま抱えていても売り場(倉庫)は圧迫するし、次の売れ筋商品を買い付ける資金を得るために、原価を割ってでも売ってしまう必要があるのです。

そんな理由で様々な流通段階で処分品が出てきます。中には売れ筋だったけど、売れ方と在庫量を比べた時、在庫過多だという理由で安い価格に再設定されるものがあります。早めに処分しないと売れ残る。季節性の高い商品であれば季節が変わる前にさばかないと、賞味期限がある商品なら、期限が切れる前に、という理由です。来月にはリニューアル新製品が出る。新製品がでたら現行品が売れなくなるので、前もって少し値下げして早めにさばこうってのもあります。結局理由は様々ありますが在庫をスムーズに現金化するための手段として価格を設定するというものです。


さて今日は流通に起因するモノの価格の決まり方を紹介してきました。今日書いてきたことは、住宅の価格提示を受けた後で、直後に大きな値引き額を提示された事がうさんくさいと思って書いています。値引きできる根拠がどこにあったのか、単に最初に盛ってあっただけじゃないのか、そんな疑いを考えていく際の前提になりうるものだと思うからです。

住宅業界においては流通費よりも、材料、施工費のウエイトが高い業種であると思われます。次回はよっちが経験したモノづくりの現場、繊維業界中心の話ではありますが、今回冒頭に少し触れた①の原価積み上げ方式の価格設定について詳しく紹介したいと思います。